代表からの ごあいさつ

   

  山本 聡

箱根甘酒茶屋十三代目店主

 昨年、早春の3月から初冬10月まで1ヶ月に一夜、ランプや菜種油の灯の中でコンサートを開催させていただきました。

この「箱根八夜」開催のきっかけは何気ないお客さまの一言でした。それも小学校低学年らしき男の子。「お母さん、見て、ここに本当の火があるよ!!」
 そうです。その男の子は実際の炎は見たことがなく、火のそばでお母さまと炎の暖かさを感じていらっしゃいました。

 私自身、普段の生活を考え直してみると、節電・節水などあまり気にしておらず、この明るすぎる生活に身を投じておりました。

 甘酒茶屋もおかげさまで創業400年余り。実際電気が使用出来るようになったのは昭和30年後半。オリンピック前のことでした。昨年度の「箱根八夜」イベントで、ランプを使用し、ランプの掃除の仕方など父に尋ね、昔の生活を垣間見ることができました。

 このイベントを通じ、お越し下さったお客さまに普段にない昔の生活にタイムスリップして頂き、暗い中に灯をともし、その少ない灯の周りに皆で集い、会話をし、そして季節の食材にこだわった家庭料理を楽しんで頂きたいと思っております。

文/山本 聡(箱根甘酒茶屋十三代目店主)

 

 箱根甘酒茶屋公式HPこちら

 

八本の旗について

『箱根八夜』が開催される週は、一週間前から四色に染められた8本のイベントののぼり旗が甘酒茶屋を取り囲み、イベントが近付いていることをみなさまにお知らせ致します。この光景をカメラにという方がとても多く見えます。またイベント中は、舞台の装飾として演奏者たちを囲み、独特なステージ演出に一役買います。油の灯火に照らされた薄暗さの中での彩りも味わいがあります。

 

第七夜・秋の特別コーナーとなるアート&ミュージックコラボレーションイベント『妖怪おどり』のパフォーマンスでは、この旗の並べ方が昔の『見世物小屋的』なものとなり、異世界感漂う舞台セットとなりました。

 

また千秋楽となる第八夜・音楽劇『神崎与五郎 東下りの詫び証文』では、舞台の後ろ幕となり、歌舞伎のような雰囲気をも醸し出しました。

コラボレーション的な旗制作

この旗制作は、筆文字屋『翔空』河野友子さん(書)と広瀬玲子さん(アート・デザイン担当)とのコラボレーション的な連動で進められています。河野さんの書はこのHPのタイトルを始め、チラシや記事などの全てに共通で使用されています。広瀬玲子さんは、その写真を元に版を削り、さまざまな色で染め上げ、一品ずつの旗を完成させて行きます。(写真 広瀬玲子さん)

広瀬玲子さんは、数年前から染色布や紐で作られたアート作品の野外展示なども手掛けており、昨年2013年は箱根甘酒茶屋の近所でもある『お玉ヶ池』にて、『作品を歩かせる』という異色のアートパフォーマンスイベント『偶然の森』を開催しています。またその時の写真は、インパクトの強さから『箱根八夜』の演奏メンバーが制作したアルバム『呼吸する箱根』のジャケットにも選ばれました。

このふたりを中心に『箱根』『甘酒茶屋』『演奏』などのイメージがすりあわせされ、文字デザインの方向性を詰め膨大な時間をかけ、そこから生まれた数十点も書の中からこの文字が選ばれました。決定した文字は八枚の旗にとどまらず、チラシや八夜の衣装であるハッピ、そして手ぬぐいにいたるまで全てに統一で使われています。

(写真 筆文字屋『翔空』さんと八夜出演者)

この制作過程が、広瀬玲子さんのブログからご覧頂けます。

『箱根八夜ののぼり旗を作る』全15話

  ①材料を揃える      ②筆文字を依頼する

  ③のぼり旗を縫う     ④いよいよ筆文字

  ⑤筆文字をしあげる    ⑥トレースをする

  ⑦型紙に下書きをする   ⑧型紙を掘る

  ⑨紗をはる        ⑩布を染める

  ⑪色を抜く(試作編)   ⑫色を抜く(本番準備)

  ⑬色を抜く(本番編)   ⑭色を抜く(仕上編)

  ⑮色止めをする→納品する

  

作家たちの創作活動

広瀬玲子個展「into the LEAF」

筆文字屋 翔空 友子展「すたーとらいん」